翻訳支援ソフト (CATツール)

CATツールとは  

(更新:2021/7/7)

 CATツールの「CAT」とは、Computer Assisted Translationの略で、「コンピュータ支援翻訳」という意味です。つまり、CATツールとは、コンピュータ支援翻訳のための道具ということです。現在よく使われているCATツールにはTrados、MemoQ、Memsourceなどがあります。

 CATツールは機械翻訳とは違い、あくまで翻訳するのは翻訳者です。翻訳された内容は原文と訳文のペアで「翻訳メモリ」(Translation Memory、略してTM)としてストックされていきます。

 新たに訳す内容に、ストックされたTMと同じもの、または類似の部分があれば、自動で抜き出して表示してくれます。同じような文章が繰り返し出てくる技術文書などでは、過去の訳文を「リサイクル」でき、翻訳者の労力を減らしてくれます。

 TMは翻訳のプロジェクトマネジャーが管理することで複数の翻訳者の間で共有することができ、訳語統一にも役に立ちます。同じ単語や表現を前にも訳した人がいればそれが表示されますので、それに合わせて訳すことで、文書全体で訳語を統一することができます。

 また、顧客から指定された用語集などがある場合も、あらかじめ登録しておけば、該当の単語や表現が出てきた場合にハイライトされて表示されます。「用語集を提供したのにそれに合わせた訳をしてくれなかった」という苦情を減らすことにもつながります。

Tradosは翻訳者側がライセンスを購入

 このようにとても便利なCATツールですが、問題は導入のための費用が高いことです。Tradosは個人でライセンスを購入しなければならないので、まだ翻訳者として稼働したばかりの人にとっては痛い出費です。

 一方、Memsourceはオンラインで作業するタイプのCATツールで、作業画面にログインするための認証情報は毎回案件ごとにプロジェクトマネージャーが提供してくれるか、個人用のログインIDを提供してくれる場合もありますので、翻訳会社と仕事している限りにおいては翻訳者側の費用負担はありません(翻訳会社によっては一部MemoQ、Tradosの認証情報が提供されることもあります)。

 翻訳者を通さず自分ひとりで作業している時にMemsourceを使いたい場合は、月額や年額を払ってライセンスを購入すれば、自分だけで同じ機能を使うこともできます。

買ったほうがいいのか、買わなくていいのか

 結論から言うと、案件の種類によります。「何度も同じような文章が繰り返し出てくる」ような分野で仕事をする場合は、やはり作業効率がアップしますし、一文ずつ対訳が目の前に並んでいる状態で作業しますので、訳抜け防止効果もあります。

 また、翻訳会社側も、Trados案件、MemoQ案件が入ると、それらのライセンスを持っている翻訳者にしか頼めないので、CATツールで作業する案件を多く受注している会社と取引している場合は、持っていることで受注機会が増える可能性もあります。(ただし「持っていません」と言っても、Wordファイル等に抜き出して送ってくれる場合もあったりするので、一概には言えません)

 例えばTradosの場合ですと、ライセンスを購入すると”I work with SDL”というアイコン画像がもらえますので、そのようなアイコンを自分のブログやウェブサイトに載せてアピールすると、Trados案件の打診が増えるかもしれません。

 一方、文芸作品や映画字幕など、繰り返しの少ない案件ではCATツールの出番は少ないかもしれません。ただ、対訳を残しておきたいけれどデータが増えてきた時にただのスプレッドシートでは不安だという場合は、データベース代わりに使うという選択もあるかもしれません。

 とはいえ、CATツールを持っていないと仕事が来ないというわけではありませんので、迷っているうちは無理して買わなくてもいいかもしれません。

 ちなみに私はTradosを所有していますが、2017年頃、「Trados持っていませんか」という問い合わせがあまりにも多く、持っていないことによる受注機会の損失の方が大きいかもしれないと直感的に思ったため、導入しました。

 買ってみればものすごく便利で今も日常的に使用していますが、安い買い物ではないので、「どうしても必要になってから買う」というスタンスでも、私は構わないと思います(個人の意見です)。

Tradosを買ったけど、使い方がよく分からない

 私もそうでしたが、Tradosは最初は使い方がよく分からないので、買ってもしばらく放置することがあります。使い方を指南したマニュアル本のようなものを買ってその通り真似しようとしても、自分の画面と本の画像が微妙に違ったりして、上手くいかないこともあります。ですから、(大きい声では言えませんが)市販のマニュアル本を買うのはあまりお勧めしません。バージョンはどんどん上がっていくので、書籍はどうしても内容が古くなります。

 Tradosを購入したらまずはインストール・ライセンス登録をしてから、使い始めます。

1.インストールについてはこちら:

2.ライセンス登録についてはこちら:

3.基本操作ガイド(60分程度の無料動画)はこちら:

 ・視聴には氏名、会社名、国名、Eメールアドレス等が求められます

 ・基本操作ガイドの動画が掲載されているページは時々URLが変わることがあるので、その場合はTrados公式ウェブサイトの検索窓で日本語で「スタートアップ」と入力して探してください。

余裕があれば有料のウェビナー等に参加してしっかり使い方を学ぶのもいいと思いますが、費用も時間もかかるので、こうしたスターター向けの無料のガイドを活用してどんどん使い始めるのがいいと思います。

 インストール、ライセンス登録が終わってTradosを開くと、中に「ようこそ」というメニューがあります。そこをクリックするとページ上部に「スタートガイド」というタブがあります。それを開くと、公式のマニュアルがアップされていますので自由にダウンロードできます。バージョンが合わない市販の本よりこちらの本家のマニュアルの方が分かりやすいこともあります。

CATツールを入れるとPCが重くなるので、PCのスペックが低い場合は注意

 もう一つお伝えしておきたいのは、CATツールを入れるとPCが重くなるということです。当初私はそれを知らなかったので、それまで使っていたPCにTradosを入れて、しばらくしたらものすごくPCに不具合が起きて普段の作業にも支障をきたしたので、一旦Tradosをアンインストールしたことがあります。

 その後、PCを新調してから入れ直したという経緯があります。ですから、その夏は一気にかなりの出費がありました。翻訳に必要なPCのスペックについては、こちらのブログ記事が分かりやすいです。

SDL Tradosをお得に買うには

 ちなみにTradosの値段はいつも同じではありません。キャンペーン期間があったり、通常価格に戻ったり、年間を通して価格にかなり変動があります。ですから気になっている人は、公式ウェブサイトを何度も覗いて、価格をチェックしてから購入を検討しても良いと思います。

 また、Proz.comやアメリアに入会している場合は、会員割引があることがありますので、注意深くチェックするとお得に買えることがあります。専用の画面から買わないと割引にならないこともありますので、よく調べてから買うのがお勧めです。Googleで「Trados お得に買うには」などのキーワードで色々な記事がヒットしますのでお試しください。

MemoQ派もかなりいる

 残念ながら私はMemoQを所有していませんので、詳しい記事を書くことができませんが、Tradosよりも使いやすくて好きだという”MemoQ派”も業界内にはかなりいます。価格帯はTradosと同じぐらいですので、両方持っている人はあまり多くはないようですが、両方持っている方もいらっしゃいます!

 ただ、CATツールはどれか一つを使いこなしていれば、共通点も多く、他のツールもすぐに使えるようになると思いますので、焦って一気に全部揃える必要はないと思います(個人の意見です)。

 公式ウェブサイトを見ると、MemoQにも「MemoQ cloud」というオンラインベースのサービスがあるようです。Memsourceのようにクラウドベースで作業できることへのニーズの高まりに対応したケースだと思います。

(Tradosも最新版の2021版ではクラウドベースに対応するようです。先行予約受付中)

Memsourceはオンラインで作業するCATツール

 次に、Memsourceについて少しご紹介します。こちらは上にも書いたように、翻訳会社から仕事のためのログイン情報が提供されるので個人でライセンスを購入する必要はありません。

 また、直感的に操作できる作りになっているので、特に事前に長時間のセミナーを受講しなくても、すぐに使えます。翻訳者向けの使い方動画はこちらです。(音声は英語です)

 Memsourceはオンラインでの作業なので、複数の端末からアクセスできるのが特徴です。自宅ではデスクトップパソコン、出先ではノートパソコンで作業しているというような場合でも、認証情報さえ持っていれば、すぐにアクセスして作業できます。

各ツールの公式ページは以下の通りです。


・Trados [公式ウェブサイトはこちら]


・MemoQ [公式ウェブサイトはこちら]


・Memsource [公式ウェブサイトはこちら]


 さきほど「市販の本を買うのをお勧めしません」と書いたのと矛盾しますが、こちらの本は複数のツールを横断的に解説してあるので、CATツール自体の概要をざっとつかみたい場合にはお勧めです。Kindle Unlimitedの対象でもありますので、Kindle Unlimitedを利用している方は手にとってみてはいかがでしょうか。

翻訳ツール大全集: Trados memoQ Memsourceなどの翻訳支援ツールの使い方を徹底解説!